□ 【書籍紹介】原康子『南国港町おばちゃん信金』新評論 □
皆さんはNGOに対してどのようなイメージを持っているだろうか。何だか良い
ことしてそう、立派、素晴らしい正義感、などなど。また人によっては、自己満足
、胡散臭いなどと感じている方もいるかもしれない。何より、「イメージばかりが
先行してしまい、実際にどんな活動をしているのかわからない」という意見を私は
よく耳にする。援助という言葉によって、「援助する側」「援助される側」という
構図が自然と出来上がってしまうため、「途上国の貧しい人々に何か良いことをし
てあげる」と考えてしまうのは無理もないだろう。
本日紹介する書籍はそんな「クールなNGO」というイメージを見事に打ち砕い
てくれる。本書は、国際協力NGO(認定NPO法人ムラのミライ)に勤めていた
『私』が、常夏の南インドでスラムのおばちゃんたちと一緒に信用金庫を作り上げ
る奮闘記である。活動を始めた頃「貧しい人たちを、私が助けてあげなければ」と
いう正義感に駆られていた筆者だが、実際にインドで活動をしていく中で自分がい
かにイメージで物事を捉えていたか、活動の中で徐々に見えてきた「国際協力」の
リアルをまざまざと描いている。
(引用)
毎年1月、ポンガルという収穫を祝う祭りがあり、この時期にはスラムのおばちゃ
んたちもサリーを新調する。このときが狙い目と、祭りの10日前に商売の計画を
始めた。
おばちゃんA「研修で習ったやんか、まずはコスト計算やよ!」
私「すご〜い、コスト計算!」
おばちゃんA「ほぉやて、当然やんかぁ。ほんでまず商売繁盛祈願にお寺参りに行
かなかんて。お供え物代やろぉ、仕入れに行くときの交通費やろぉ」
おばちゃんB「金銭出納帳と在庫管理帳も付けなかんで。そや、文房具もいるやん
か」
おばちゃんA「売り先は自分とこのスラムやで交通費はいらんし、もうけを山分け
すればええで、日当とかもいらんな。はい、コスト計算おしまいやよ」
私「エッ?」
おばちゃんB「あと現金定価販売だけやで。ツケも値切りもアカンでね、えかっ!
」
私「ちょー待ってっ!買い物んとき、みんないつも値切っとるでしょ?それに『ツ
ケ買いは当然』て言っとったし、コスト計算もそんだけで終わってまってもええの
?」
(引用終わり)
岐阜弁で綴られたおばちゃんたちとのやり取りに、この本の舞台がインドである
ということをつい忘れてしまう。インドにまつわるちょっとしたコラム、ときどき
入る4こま漫画もこの本の特徴かもしれない。「国際協力」で書籍を探すと気難し
い学術書ばかりが出てくる中で、ここまでフランクに描かれたものはかなり珍しい
のではないだろうか。本書に取り上げられた数々のやり取りが、国際協力という仕
事を身近に感じさせてくれることはいうまでもない。
著者:原康子
発行:新評論
値段:1,944円
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