カンボジアの教育を「読書WS」で変えられるか?

□ カンボジアの教育を「読書WS」で変えられるか? □

「カンボジアの教師の読解力は15歳の子どもと同じぐらいじゃないかな」

こう話すのは、カンボジアにかかわって24年の経歴をもつワークショップのプロ
(肩書はラーニングデザイナー&ファシリテーター)の中村健司さんです。
中村さんの上の発言は、言うまでもなく、カンボジアの教師たちをディスっている
わけではありません(彼はカンボジア愛にあふれています。なにしろカンボジア料
理店をかつて大阪で営んでいたぐらいですから!)。
実は、この発言の裏にはカンボジアならではの負の歴史があるのです。
カンボジアといえば、1970年代後半に大虐殺が起きた国。犠牲者となったのは当時
の人口の4人に1人(カンボジア大虐殺で殺された人の数は、ルワンダ虐殺よりもは
るかに多い)。虐殺のターゲットとされたのは、教師を含む知識階級の人たちでし
た。大虐殺が収まってからも、カンボジアは1991年まで内戦に突入。こうした結果
、カンボジア全土から教師がいなくなっただけでなく、教育そのものが崩壊してし
まったのです。
大きなダメージを負ったカンボジアの教育システム。この問題を放置して、カンボ
ジアは隣国のタイやベトナムのように発展していけるのでしょうか?答えはノーで
すよね。貧しさからの脱却(健全に発展するということ)は平和を築く礎になると
いうのに。
カンボジアが発展するうえでとりわけ大きな足かせとなっているのが、「読解力・
理解力」を備えた人材が不足していることです。世界の労働市場を勝ち抜くには、
カンボジア人ひとりひとりが読解力・理解力をもつことは必須。しかしこれは見方
を変えれば、教師と教育の質を上げない限り、次世代を担う子どもたちが読解力・
理解力をしっかり身につけることはないという厳しい現実があります。
この難題に立ち向かう外国人(日本人)が、冒頭の発言をした中村さん。読解力・
理解力をアップさせることを目的に「読書ワークショップ」をカンボジア全土に広
めようと動き始めたわけです。活動の意義について彼はこう話します。
「カンボジアでは(他の途上国と同様に)就学率や識字率は上がってきたが、『読
解力・理解力』をもつ人はいまだに少ない。つまり、文章を読んでも、相手が話す
ことを聞いても、きちんと理解できないということ。『文字の読み書き』と『読解
力』はまったくの別もの。僕が得意とする読書ワークショップの力で、この問題を
解決したいと思った」
中村さんが手がける象徴的な活動が、カンボジア教員養成大学(4年制)で2年前
から始めた「アクティブラーニングの要素を取り入れた読書ワークショップ」です
。このワークショップは昨年度、カンボジア教員養成大学の正式な演習科目として
採用されました。今年度からは必修に!この仕掛け人が中村さんなのです。
そこで中村さんが選んだやり方が、数に限りのない子どもたちに直接教えるのでは
なく、これから教師になるカンボジアの若者たちが通うカンボジア教員養成大学の
教官にアプローチすること!しかも手法は紙芝居や読み聞かせではなく、「ワーク
ショップ」というのが斬新です!
このプロジェクトの図式は、中村さんがまず、カンボジア教員養成大学の教官に「
アクティブラーニングの要素を取り入れた読書ワークショップ」のやり方を教え、
今度は教官がそれを、これから教師になる学生に教え、その学生がさらに教師にな
ってからは子どもたちに教えるというものです。
今回の講演会では、このプロジェクトの概要を中心に、カンボジアの教育事情もお
話いただきます。
海外からの支援で小学校の校舎がどんどん建つカンボジア。ですがその半面、教育
の質は改善されていません。就学率が上がっても教育の質が上がらない問題は、実
はカンボジアに限らず、多くの途上国で起きています。ですのでカンボジアはもと
より、途上国の教育に携わる方/これから携わりたい方にとっては、第一線でチャ
レンジする中村さんのお話を聞けるのは貴重なチャンス。ご自身の活動にもアイデ
アを取り込めますね!
中村さんのお話のポイントを簡単に下にまとめました。大きく2つに分類できます。

<?中村さんの活動>
・カンボジア教員養成大学の教官に、アクティブラーニングの要素を取り入れた「
読書ワークショップ」のやり方を教える。ノウハウを身につけた教官らが今度はカ
ンボジア教員養成大学に通う学生に教える。
・中村さんとカンボジア教員養成大学が描く青写真は、学生が将来教師になってカ
ンボジア全土に散らばったとき、この読書ワークショップを子どもたちに実践し、
読解力・理解力を引き上げること。
・読書ワークショップでは、楽しく自由に意見を言い合うこと(アウトプット)を
なによりも重視。カンボジアの学校では通常、学生・生徒が自由に意見を言うこと
はできず、これが思考をストップさせている。
・苦労したのは、振り返りの習慣がないカンボジアで、読書ワークショップの練習
をしたあとにカンボジア教員養成大学の教官ら自身で振り返りをし、学びのサイク
ルが回るようなシステムを作り上げたこと。
・今後は、プノンペンにあるカンボジア教員養成大学(4年制)だけでなく、カン
ボジア第2の都市バッタンバンの教員養成大学(4年制)にも拡大予定。将来は、
カンボジア全土にある22すべての教員養成校(2年制)に水平展開する。
・このプロジェクトが始まるきっかけとなったのは、カンボジアで日本人が主宰す
る国際協力NGO「KIZUNA」が2年前にプノンペンで主催したイベントで、中村さんが
カンボジア教員養成大学の学生ら300人を対象に読書ワークショップを開いたこと
。これに参加した学長から「このワークショップみたいな読書科目を作ってほしい
」と依頼された。

<?カンボジアの教育事情>
・経済協力開発機構(OECD)が15歳の生徒を対象に実施する国際学力調査(PISA)
で、カンボジアの成績は世界最低ランクだった。最低限の読解力をもつ生徒はわず
か8%と衝撃的な結果に。
・校舎の建設で海外からはあまたの支援が入ったが、教師の能力アップの支援は少
なく、読解力の支援はほぼゼロ。
・カンボジア大虐殺で教師が殺されていなくなったため、学校を出た人がとりあえ
ず教師になった。
・教師自身が本を読まず(楽しい読書体験がない)、読解力が低い。
・教師がきちんと授業をしない。

■登壇者
中村健司さん(ラーニングデザイナー&ファシリテーター、Learning is fun代表

大学時代に貧困問題に取り組むNGOの活動に参加し、国際協力の道を志す。現場目
線を学ぶためバックパッカーで東南アジアを歩く。帰国後、日本とイギリスの大学
院でそれぞれ国際人権法、企業とNGOの協働を学ぶ。その後、父が経営する地域密
着の街の電器店、カンボジア料理店の起業・経営を経てカンボジアに移住。日本の
常識が一切通じない環境で現地スタッフとの試行錯誤で、学習がもつ可能性に気づ
き、現在の仕事を始める。モットーは、学ぶ能力に国や文化は関係ない。学ぶ楽し
さを思い出し、自らの可能性を信じることができれば、人は自然と学び出す。
■日時
3月2日(水)20時?22時30分
■詳細
下のPeatixのページからお申し込みください。お申し込みはご入金をもって完了し
ます。締切日は2月28日(月)。定員に達した時点で締め切らせていただきます。
https://peatix.com/event/3162203/view
■主催
特定非営利活動法人開発メディア(ganasの運営団体)