□ 【講演会】個人を対象にした援助はアリかナシか? □
【6/3特別講演会】紛争が11年続くシリアを支援してきた佐藤真紀さんが言い
たいこと、「援助を費用対効果でみるのはどうなのか?」
シリアにかかわって28年。青年海外協力隊員として1994年にシリアに派遣さ
れて以来、シリアをはじめ中東を舞台に援助業界で働いてきた人がいます。佐藤真
紀さん、60歳。
援助のあり方について、佐藤さんは声を大にして言います。
「がんを患うシリア難民を支援してきて強く感じるのは、患者の治療費を払ってあ
げるとか、個人(本当に困っている人)を対象にした援助もありなのではないか」
こう唐突に切り出しても、わかりにくいかもしれません。少し説明させてください
。
援助業界では一般的に、いち個人を対象とする支援を避ける傾向にあります。なぜ
か。公的資金を原資とするケースは言うに及ばず、そうでなくても「平等性」を理
由に、もっと全体に寄与するような援助をしたほうが良い(効率的)と考えるから
です。がん患者を例にとるならば、病院を建てることはしても、個人の医療費は負
担しない、というスタンスです。
援助業界で重視されるのは「援助の費用対効果」。早い話、〇〇円を援助して、そ
の結果、裨益者は〇〇人にのぼった、とPRしたいわけです。
この傾向について佐藤さんは異を唱えます。
「保険制度で医療費をカバーできない国では、患者が負担する金額は彼らが払えな
いほど大きくなることもある。難民はどうするのか。現実は、NGOのスタッフが
ポケットマネーからお金を出したり、お金持ちが助けたり、クラウドファンディン
グで医療費を集めたりしている。ただこうしたやり方は、援助業界からすれば『軽
視』されていると思う」
そもそも、援助のやり方に上も下もないはず。重要なのは援助機関やNGOに任せ
きりにするのではなく、助けられる立場の人(みんな)が、がんを患う難民のよう
に“援助から取りこぼされた人”を助けること。援助のすき間を埋め合うためには
「多彩な援助の方法」があってしかるべき、というのが佐藤さんの主張です。
佐藤さんはさらに続けます。「いま流行りのSDGs(持続可能な開発目標)とい
う言葉に惑わされてはいけない。援助から取りこぼされている人は誰なのかを考え
、ひとりひとりが行動することが世界を良くすることにつながる」
今回の特別講演会では、こうした考えのもと佐藤さん自身が立ち上げたプロジェク
トの詳細を中心に、知られざるシリアの事情についてもお話していただきます。
2011年に紛争が勃発して11年が経つシリア。シリア難民の数はおよそ660万人(これ
以外にも、国内の別の場所に逃れた国内避難民がおよそ670万人います)で世界最多
です(ちなみに難民の数が600万人を超えるのはシリア以外にベネズエラとウクライ
ナ)。
援助の第一線にずっと立ち続けてきた佐藤さんのお話は、紛争や平和構築を勉強し
ている学生にとっては現場のリアルな声を聞く機会に、現役の開発ワーカーにとっ
ては援助のあり方を考える機会に、それ以外の方にとってはシリア紛争の裏側を知
る機会になると思います。
佐藤さんのお話のポイントを簡単に下にまとめました。大きく2つに分類できます
。
<?佐藤さんがいま力を入れるTeam Bekoの活動>
・Team Bekoについて。組織に縛られることなく、“小さな国際協力”を
それぞれが責任をもって進めるチームというのが特徴。子どもたちのアートを通し
た交流、商品作りなどをする。
・年賀状プロジェクトについて。シリアの子どもが描いた干支の絵をデザインした
年賀状を作り、それを売る。収益はすべてシリアの支援活動に使う。活動を回すの
は主に大学生。
・クラウドファンディングについて。シリア北部のアレッポに住む2人のがん患者
の治療費、南西部のダラアに住む青年の外科整形の費用、クルド地域でやけどした
少女への治療費などを工面してきた。
・個人を対象とする支援はなぜ重要か、について。
<?知られざるシリアの現状>
・欧米からの経済制裁の中身とシリアの子どもたちはどう困窮しているのかについ
て。
■登壇者
佐藤真紀さん(Team Beko代表)
1961年、奈良県生まれ。早稲田大学卒。ブリヂストン、青年海外協力隊(イエメン
、シリア)、国連ボランティア(パレスチナ)、日本国際ボランティアセンター(
JVC)パレスチナ事務所代表などを経て、イラクの小児がん患者への支援に特化し
たNGO「JIM-NET」を2004年に設立。2019年には、シリアの小児がん患者を助けたり
、伝統技術を生かした新商品の開発・販売を手がけたりする任意団体「Team Beko
」を立ち上げる。多摩大学グローバルスタディズ学部の非常勤講師も務める。
■日時
6月3日(金)20時?22時30分
<タイムライン(予定)>
19:50 開場
20:00 開始
20:10 講演「援助を費用対効果でみるのはどうなのか??シリア支援の現場
から考える?」(Team Beko代表 佐藤真紀さん)
21:00 質疑応答
22:30 終了
■参加費
・社会人:1500円
・学生:1000円
・ganasサポーターズクラブのパートナー/サポーター:無料
■申し込み方法
下のPeatixのページからお申し込みください。
https://peatix.com/event/3254486/view
■主催
特定非営利活動法人開発メディア(ganasの運営団体)